防災コラム
お寺に泊まって防災力アップ
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先日静岡市清水区の龍津寺で小中生を対象にした防災合宿が行われました。
感染症、断水や停電などへの具体的な対応策を実践的に盛り込んだ訓練の様子と狙いについて住職の勝野秀敏(しゅうびん)さんに聞きました。(2023年12月12日SBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」Team Buddyのコーナーでの放送をまとめました)
龍津寺(りょうしんじ)臨済宗妙心寺派の禅寺。小島藩の香華所として三代藩主「瀧脇松平昌信候」の墓所を祀る。静岡市清水区。
インフル流行を逆手に
合宿は2008年に地元有志が始め、小中生がお寺に泊まりながら学校に通うことで、集団生活を学んでもらう目的で続けられています。お寺の近くのお宅にお風呂を借りに行く「もらい湯」など、普段ではできない体験が好評です。ところが4年ぶりの開催となった今回はインフルエンザの流行でもらい湯は中止に。そこで発想を転換し「防災」をサブテーマにしました。「風呂の代わりに体を拭いて過ごす」「ビニール袋で炊飯する」など避難所生活を疑似体験してもらいました。
必要な備え見極め準備
体拭きシートやドライシャンプーには抵抗があるかと思いましたが「いい匂いがしてスッキリした」と概ね好評でした。しかし、寒さが厳しい時期は何かしらの工夫が必要だと学ぶことができました。私は6年ほど、京都の禅寺で修行をしましたが禅の修行道場ではガスや電化製品を使わない生活で、毎日マキで湯を沸かし、かまどで米を炊いていました。私たちはある時代まで水道や電気がない生活を普通に送ってきたのですから必要な備えさえしっかりすれば、ちゃんと生きのびられるのです。
顔の見える関係育んで
この合宿には「裏テーマ」が設定されています。それが「大人同士がつながっておく」ことです。車社会の昨今、会社と家庭の往復だけでは地域の方たちと知り合う機会は多くありません。合宿に参加している子どもたちを「媒(なかだち)」として大人たちが顔見知りになり、信頼し、頼り合える関係をつくっておくことはとても大切なことです。緊密なつながりでなくていいんです。声を掛け合い、ちょっとしたおすそ分けをし合える間柄が、災害時には大きな力を発揮するはずです。