「TeamBuddy」は、防災・減災についてみなさんと一緒に考え、行動する静岡新聞社・静岡放送のプロジェクトです。「しずおかの防災活動を活性化させるのは若い力だ」と一昨年から始まった高校生防災特集「MY防災」。今年は県中部の6校の高校生が避難所生活の課題について実践的に学びました。
年々参加生徒と取材先が増えていた「MY防災」でしたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、取材活動に伴う感染リスクを考慮し、感染防止対策を施した体育館を使用して、避難所生活で課題とされる「睡眠環境と感染症予防対策」「トイレ」「人命救助」の3つのテーマについて実践的に学びました。参加した高校生、講師には事前の健康チェックをしてもらい、当日は体調の問診、体温測定も実施しました。またマスク着用、定期的な換気、消毒を徹底しました。
- 1時間目
- 「もしも、災害が起きたら」 過去の映像で災害時の様子を知る
- 講師:SBS報道記者 岩崎 大輔
- 2時間目
- 「避難所生活を体験」 段ボールで避難所体験
- 講師:静岡市葵区防災指導員 藤浪 清さん
- 3時間目
- 「災害時のトイレ話」
- 講師:Wooマンボープロジェクト 浜田 晴子さん
- 4時間目
- 「応急処置のポイントを学ぶ」
- 講師:日本赤十字社県支部 成岡 亮さん
- 5時間目
- まとめ総括
FIRST PERIOD
もしも、災害が起きたら
SBS報道記者 岩崎 大輔
巨大地震は必ずやって来る… 備えの確認を
1時間目のテーマは「静岡を襲う巨大地震の姿」。SBSの岩崎大輔記者が過去の地震災害の映像や写真を見ながら解説しました。
気象庁のデータベースによると、阪神・淡路大震災(1995年)以降、国内では震度6弱以上の地震が56回発生しています。平均すると年2回の頻度で被害を伴うような揺れが国内のどこかを襲っていることになります。1995年「阪神・淡路大震災」では建物の倒壊や火災が相次ぎました。2004年「新潟県中越地震」では山崩れが発生、エコノミークラス症候群が問題となりました。2011年「東日本大震災」では、巨大な津波が多くの命を奪いました。
こうした被害が今、静岡県で懸念される「南海トラフ巨大地震」でも想定されます。
焼津水産高3年の山田寧音さんは「まさか起こるとはというスタンスでいるからこそ被害が拡大する。備えることの大切さを学びました。」と授業を振り返りました。
SECOND PERIOD
避難所生活を体験
静岡市葵区防災指導員 藤浪 清さん
ウイルスから身を守れ… 段ボールベッド活用を
2時限目は避難所生活で問題となる「睡眠環境と感染症対策」です。静岡市葵区防災指導員の藤浪清さんを講師に迎え段ボールを使ったベッドづくりに取り組みました。
全国各地の災害現場でボランティア活動を続けている藤浪さんは現在、「段ボールベッド」の普及にも力を入れています。
「開設直後の避難所では床に毛布などを敷いて寝ることが多いのですが、周りの人がトイレに立ったりして動きまわると、寝ている人たちは舞い上がったほこりを吸い込んでしまいます」と説明する藤浪さんは、冬の避難所であっという間に風邪が広まる様子を目の当たりにしたそうです。ほこりの中に病原菌やウイルスなどが含まれているからです。感染症専門家らの研究発表などから、就寝時に頭を床から最低30センチ高くすると感染リクスが下がることを知った藤浪さんは「十分な高さがあり、簡易で、寝やすいベッド」を開発しました。一人用のベッドに必要なのは12個の段ボール。高校生たちが箱を組み立てていくと藤浪さんは「これが重要」と交差した2枚の板紙を示しました。板紙を箱に入れることで筋交いとなり、重さに強くなるのです。ベッドに横になった駿河総合高3年の藤本湧磨さんは「柔らかい寝心地で、しかも安定している」とその強度に驚いていました。また、静岡商業高3年の末吉葵さんは「支援物資を入れた段ボール箱も活用できるはず。そのためにも防災バッグにガムテープやカッター、はさみを入れておこう」と実践的な備えの意識を上げていました。
THIRD PERIOD
災害時のトイレ話
Wooマンボープロジェクト 浜田 晴子さん
誰しもが直面… 備えよう携帯トイレ
3時間目は忘れられがちな「トイレ」問題がテーマです。講師はマンションの防災対策支援に取り組む「Wooマンボープロジェクト」の浜田晴子代表(静岡市)。東日本大震災発生時に混乱した状況などを交えてトイレ問題の重要性を伝えてくれました。
「大勢の人が集まるイベントやお祭りの時、トイレはどんな状況になりますか」。浜田さんは被災時の状況をイメージしやすいように、身近な例を引き合いに出して説明を進めました。焼津水産高3年の小林彩子さんは「誰しもが直面すること。いかに備えていくかが大切だと思った」と問題への理解を深めていました。
浜田さんは家庭用便座に携帯トイレのビニール袋をセットし、凝固タイプの処理剤を入れ、縛って捨てるまでの流れも実演しました。高校生の代表者も処理済みのビニール袋を手に持ち、中に入れたカレーミックスの匂いが漏れてこないことを体感しました。
日ごろ利用しているトイレは災害時、給水や電気の遮断によって通常通り使えなくなることが予想されます。講義には静岡市の職員も駆けつけ、災害用簡易組み立てトイレを紹介しました。駿河総合高3年の山口奈々さんは「今までトイレのことについて深く考えたことはなく、大きな問題になるとは思っていなかった」と重要性を感じたようでした。清流館高2年の楠元杏佳さんは「携帯トイレの良さを皆に広めていくことで災害時でも困らないようになる」と普及啓発の必要性に気づきました。
FOURTH PERIOD
応急処置のポイントを学ぶ
日本赤十字社県支部 成岡 亮さん
ハンカチ・タオルで予防… 新型コロナ対応策
4時間目のテーマは「応急処置」。日本赤十字社静岡県支部の成岡亮さんと鈴木みづきさんが一次救命処置のポイントを解説してくれました。高校生はAED(自動体外式除細動器)の使用方法を学んだり、人形を使った心肺蘇生法の実技に取り組んだりしました。
成岡さんは、要救助者を発見したら①周囲の安全を確認②大声で叫んで周囲に119番通報などの協力を要請③呼吸を確認④呼吸が正常でなければ心肺蘇生法を開始−という手順を説明しました。新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた対応策も紹介。ハンカチやタオルがあれば胸骨圧迫を始める前に要救助者の鼻と口にかぶせる、成人に対しては人工呼吸はしないなどとアドバイスしました。
藤枝北高3年の大石真幸さんは「新型コロナによる処置の違いが興味深かった。緊張感を持ちながらも正確な知識と冷静な判断が必要になると思う」と授業を振り返りました。