「TeamBuddy」は、防災・減災についてみなさんと一緒に考え、行動する静岡新聞社・静岡放送のプロジェクトです。近年、防災活動に関わる若者の減少が指摘されています。若者が自らの命を守り、地域防災の場で「若い力」を発揮するために必要な知識や心構えを得るため、この夏、高校生と一緒に考え、行動しました。
TeamBuddyの呼びかけに集まってくれたのは静岡市内の4つの高校の1年生から3年生までの9人。
「防災を自分で考える力をつけよう」と、災害時の男女の役割、被災者支援の在り方、地域防災活動と街づくり、
若者目線での防災について、組織や団体のリーダーとして活動する4人にインタビュー。
また、街中にある防災標識や、ネットなどを活用した災害リスクチェックなど、これまで気にしていなかった防災情報についてリサーチ。
命を守る情報はどこにあるのかを探りました。
高校生防災意識アンケート
調査対象:県中部地区を中心とした
高校生男女90人が回答
避難場所の認知高く、約半数が水・食料の備蓄あり
大災害発生時の被害の予想については、死んでしまう(36%)、家を失う(37%)が多数を占め、東日本大震災、熊本地震などリアルタイムで体験している災害のイメージが回答のベースとなっていると思われました。(けがをする20%、特に心配をしていない7%)
自宅周辺の避難場所を知っているか、に対しては86%が知っていると回答。学校が指定されている場合も多く認知度は高くなっています。保護者の役割である水・食料の備蓄についても49%がしていると回答し、家族内で備えについての会話がされていることがうかがえます。
地域の防災訓練には81%が「参加」、もしくは「ときどき参加」と回答しました。防災訓練は地域の大人との交流の機会。訓練内容を若者向けにするなど、さらなる参加率アップの取り組みが期待されます。
被災生活全般に貢献姿勢を持ち、災害を自分事として捉える
災害時に高校生に期待されている活動については、がれき撤去の力仕事などが大半を占めました。そのほか、高齢者のサポートや、避難所でのボランティアなど被災生活全般に貢献しようとする姿勢が見られます。
災害時の心配については、「体の不自由な祖父の避難方法」、「避難所での衛生面」、「食物アレルギー対策」など具体的な回答もあり、災害を自分事として捉え課題を想定する力があることが分かりました。
《 高校生防災意識アンケート 》
Q1.東海地震や南海トラフ地震が起きたら、あなたや、家族にどのような被害が出ると思いますか?1つ選んでください。
- A.死んでしまう
- B.けがをする
- C.家を失い住む場所がなくなる
- D.特に心配はしていない
Q2.災害に備え、家に非常食や飲料水を用意していますか?
- A.している
- B.していない
- C.分からない
Q3.災害時の避難場所には学校や公園などが指定されています。自宅周辺の避難場所を知っていますか?
- A.知っている
- B.知らない
Q4.高校生になってから地域の防災訓練に参加していますか?
- A.必ず参加している
- B.時々参加している
- C.まったく参加していない
Q5.災害について心配な事柄を教えて下さい(例:病院、食料、連絡手段、避難所生活など)
Q6.災害発生時に地域社会からどのような活動を期待されていると思いますか?
- Q1.
- Q4.
身近な防災標識
防災標識は命を守る情報だけど、普段は意識してみたことがない。ちょっと足を止めてじっくり眺めてみました。
TeamBuddyアプリ
シミュレーション体験
TeamBuddyプロジェクトが「使える防災サービス」として提供している
「TeamBuddy防災訓練シミュレーションアプリ」。
スマートフォンが普及している環境で生まれ育った
〝スマホネイティブ〞の高校生がさまざまな場面で使ってみました。
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自宅
自宅周辺の最大震度は6強だった。家具や冷蔵庫を見てみたら固定ができてなかった。ついでに家の防災グッズを確認したら、非常食はあったけど水がなかった。準備しなきゃ!!
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駅
地震で電車が止まったら駅の近くの避難場所に行くことになる。大勢の人で混乱するだろうな。普段から知っておかないと。アプリだと複数の候補が出てくるから選べて便利だと思った。
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住み慣れない場所
自宅地域から離れた場所で実際に避難場所まで歩いてみた。慣れない道だから到着まで時間が掛かった。逃げ遅れないためには、災害発生時はすぐに行動することだと実感した。
NPOあざれあ交流会議
代表理事:大國田鶴子さん・
副理事:大塚真知子さん
取材担当:清水西高
望月恵利名さん(17)、遠藤海さん(16)
高校生に気が付いてほしいのは「参加」と「参画」の違いです。参加は決められた仕組みに沿うこと。参画は仕組みを決める段階から加わることです。男性は力仕事、女性は炊事や清掃といった固定概念に従うのではなく、自分の能力や個性に合った役割を進んで見つけて避難所運営に貢献することが大切です。
「DV被害で夫から逃げている女性が名簿への名前の記載を拒んでいる」など男性運営者だけでは対応が難しい想定ばかりです。高校生はこうした現状をよく知り、避難所の運営に積極的に参画して、意見を出してほしいですね。性別ではなく個人を尊重して、互いの足りない部分を補いながら災害を乗り切る気持ちを持ってください。
静岡市森下学区自治会連合
会長:中村直保さん(74)・
副会長:宮脇章博さん(74)
取材担当:静岡商業高
青木美耶子さん(18)、岸綾乃さん(17)
都市化が進む森下学区はマンションが多く、誰が住んでいるのか把握しづらいので、住民に自治会への参加を呼び掛けています。昼間の時間帯など高齢者が一人で家にいる時に発災したらどうやって避難するのでしょうか。普段から顔見知りになっておけば災害時に誰かの協力が得られるはずです。
若い人たちも、地域の一員として顔見知りになって下さい。保護者が不在の時も周りが助けることができるだけでなく、補助が必要な人の避難の手伝いなどに若い人の力が欠かせないからです。まずは近所の人たちとのあいさつから始めましょう。
清水災害ボランティアネットワーク
代表 大石学さん(66)
取材担当:
静岡商業高 保久上萌絵さん(17)、
静岡女子高 奥村希妃さん(15)
災害後は誰もが大きなストレスを抱えます。特に高齢者や、身寄りのない人たちは孤独になりがちです。こうした人たちのケアも重要です。私たちの活動も心のケアが中心です。足湯サービスを提供して沈んだ心をほぐしたり、一緒に歌を歌ったりすることで心にたまった不安や疲れを取り除くことができるので、こうした活動にも参加してください。
静岡大学学生防災ネットワーク
代表:河村拓斗さん(19)・
副代表:勝谷勇介さん(19)・
渉外:上田啓瑚さん(19)・
会計:櫻木哲朗さん(20)
取材担当:駿河総合高
瀬尾彩乃さん(18)、池ヶ谷勇さん(18)、
栗田侑輝さん(18)
メンバーは他県からの学生が多いのですが、静岡県は備えている人とそうでない人の差が大きいように感じます。防災に関する講座やイベントが多く、学ぶ機会は豊富ですが同年代の防災意識の低さが気になります。
被災地では、デマにより被災者が混乱してしまった事例もあります。現地では正確な情報が生死を分けることがあります。高校生にはSNSなどで流れる災害情報を、確認せずに拡散しないように気を付けてほしいと思います。「自分が被害を受けたら周りにどうしてほしいか」と考えて行動しましょう。
家族で防災について話したり、防災訓練に参加していろいろ聞いてみたりするのが備えの第一歩になりそう。