防災コラム
備える
[しずおか防災人] 寺院が果たせる役割を再認識 OurBuddy 16
Profile
大昌寺副住職 青島寿宗さん
浜松市南区出身。大本山永平寺で修業。曹洞宗静岡県第四宗務所で寺院と地域住民が一緒に学ぶ「防災寺子屋」を開催。備災ガイドブックの講師などの活動も行う。
瑞生寺住職 左右田泰丈さん
浜松市中区出身。静岡大教育学部卒業後、大本山永平寺で修行。28年間高校教師を勤めた。現在、社会福祉法人遠州仏教積善会会長、保護司を務める。
寺院が果たせる役割を再認識
発災当時NGO「シャンティ国際ボランティア会」の職員だったので、3月末から宮城県気仙沼市で3年間活動しました。
東北では多くの寺院が避難所となりました。境内にスペースがあり、畳敷きの本堂は体育館より体への負担が少なく、行事で使う煮炊きの道具があったことなどの利点もありました。行政が臨時で物資や情報を提供する新たな動きも生まれました。
しかし、いきなり避難所になった寺院は数多くの問題に直面しました。仏教は苦しむ人々を分け隔てなく救済せよと説いています。一方で寺は檀家さんによって支えられているのも事実です。限られた設備や備えでどう対応するのか、試行錯誤が繰り返されました。
仏教NGOネットワークはこの経験をガイドブックにまとめました。私も寺院のアンケートなどに携わり、災害時に期待される寺院の重責を再認識しました。寺院は地域防災の要となりえます。経験を共有しながら皆さんと一緒に備えたいと思います。
(青島)
青島さんたちが立ち上げた現地事務所を足掛かりに、物資を送るほか、ボランティア活動をしましたが、避難生活の受け皿として寺院が心の面でも大きな役割を果たしていることを再認識しました。
災害時の共同生活ではもめごとが絶えません。しかし、そこに僧侶が入るだけである種の落ち着きが生まれます。ある寺では発災後も座禅や読経を続けていたところ「生活にリズムができる」と被災者の参加が増え、いさかいが少なくなりました。私が悲しみにさいなまれている人と向き合った時は「生きるのがつらい時期に支えになってもらい、ありがたい」という言葉をもらいました。
現地では「ちゃんとした葬儀を」という多くの要望がありました。悲しみに区切りを付け、復興へ踏み出す後押しを、宗教が担えるからだと思います。
震災で寺院が社会に寄与できる役割が顕在化しました。尊い知見を地域に広めることが私たちの務めと自覚しています。
(左右田)