防災コラム

9月1日は防災の日。

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『住』耐震補強が基本の「キ」 家具固定で総仕上げ

1995年の阪神・淡路大震災では死因の8割以上が建物の倒壊などによる圧死・窒息死などでした。静岡県は南海トラフなどの大地震による被害を減らすため、旧建築基準の木造住宅の耐震化を促進するプロジェクト「TOUKAI(東海・倒壊)-0(ゼロ)」を展開しています。住宅の無料耐震診断の結果、補強が必要と認められれば補強計画を作る経費と、補強工事の一部に対して補助金が充てられます。

 県くらし・環境部建築安全推進課によると、県内の住宅耐震化率は82.4%(2013年、総務省調査から推計)です。昨年の熊本地震の家屋倒壊などの被害を受けて、17年度末まで従来よりも手厚い補助をしています。同課の担当者は「地震への備えとして耐震化こそ、命を守る第一歩」と補強を呼び掛けています。

 自宅の耐震化が済んでも地震への備えは完了、というわけではありません。家庭内の防災対策の仕上げが「家具の固定」です。15年度の県の調査によると、家具類の固定について67.8%の県民が大部分または一部固定しています。固定していない理由は「先延ばしにしている」が最も多いといいます。県危機管理部危機情報課の担当者は「すぐにすべての家具を固定するのが難しければ、寝室の家具や背丈の高い家具から固定するなど少しでもリスクを減らしていくことが大事」と語ります。

 賃貸住宅の場合は、事前に家主の了承が必要です。粘着マットや伸縮可能な棒といった簡易固定器具もありますが、効果は限定的なので注意しましょう。

『食』発災後のフェーズで 変わる食料事情

災害から命を守った直後、問題になるのが食です。停電しても冷蔵庫は保冷性に優れているので、冷凍庫の物を冷蔵スペースの上に入れれば、溶けるまでの間は、食料の鮮度を保つことができます。ガスも止まる可能性が高いので、普段から加熱せずに食べられる食品を多めに買い、使った分を買い足す「ローリングストック」の習慣を付けましょう。東日本大震災では、自宅が無事だった人たちは発災から数日間は自宅内にある食料で食事ができましたが、その後はスーパーなどの店舗の復旧の遅れから思うように食料を確保できず、避難所に届けられる救援物資に頼る場面が多くありました。このように災害時の食環境はフェーズ(段階)で大きく変わります。万が一を見越した備えを心掛けましょう。

 静岡の防災行政をけん引してきた前県危機管理監の岩田孝仁静岡大教授は「災害への備えはストレスや負荷がなく、日常生活の中に溶けこむことが大事。食の備蓄についても同じで、10年、20年と続けるには何気なくできることから始め、レベルを徐々に上げるのがいい」と訴えています。

『情報』収集の習慣と、 正確さの見極めが重要

インターネットを使えば災害の警報や速報などが誰でも簡単に入手できます。またGPS機能付きのスマートフォンに専用アプリを入れれば、現在地のリスクや自分の周りにある避難所などの情報も知ることができるので、日ごろから災害情報収集の習慣を付け、万が一に備えましょう。

 ネット時代の災害で問題なのが「情報の信ぴょう性」です。ネットメディアの情報をうのみにせず、行政や報道機関などからの発表と照らし合わせて正確な情報を見極める力を付けましょう。

 「ネットには未確認の情報が大量に流れていて、入手した情報の食い違いから避難所の運営が混乱することもありました。こうしたなか、毎朝避難所に届く新聞と、小型ラジオが頼りになりました」。福島県田村市から母子3人で浜松市に自主避難し、現在は災害ボランティアコーディネーターとして、乳幼児を持つ親を対象にした防災講座の講師として活躍している大竹真希子さんの言葉です。大竹さんは避難所生活を通して、情報収集の難しさを痛感したといいます。「災害時には家族を守るために確かな情報が欲しいんです。新聞、ラジオ、テレビなどのニュースは、情報の真偽をできるだけ確認してから発信するはずなので、自分の行動の判断基準にしました。特に小型ラジオはイヤホンを使えば、子どもの世話をしながら情報を入手できるので大助かりでした」と振り返りました。

 被災体験から災害時に役立つアイテムをまとめて入れた防災バッグの準備を提唱している大竹さん。バッグには小型ラジオも忘れずに、と呼び掛けています。「電池切れを防ぐために、ラジオの電池は外して携帯するのがポイントです」。