防災コラム
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[しずおか防災人] 不確実さ認識して日頃の備え充実を OurBuddy 07
Profile
静岡大防災総合センター客員教授
吉田 明夫氏
1944年浜松市生まれ。
気象庁地震予知情報課長、東京管区気象台長など歴任。
元地震防災対策強化地域判定会委員
不確実さ認識して日頃の備え充実を
国は2013年、「地震の規模や発生時期を高い確度で予測することは困難である」とする報告書をまとめた。一方、「観測データの変化に基づいてプレート境界のすべり等の固着状態の変化が検知できれば、不確実性は伴うものの地震発生の危険性が相対的に高まっているとは言えそうである」とも述べている。国はこの地震発生の危険性が相対的に高まっている状況を「切追度」という観点から区分けし、それを基に防災対策を講じる新たな仕組みを作ろうとしている。
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前兆と推定される現象を「切迫度」で切り分け、被害の視点からの「脆弱性」と組み合わせて防災対策を講じるというのは理にかなっているようにみえますが、それは実際に有効な方策といえるのでしょうか。例えば、南海トラフの東側を震源とする大地震が起きた場合、壊れ残った西側では、誰もが「大地震の司能性が高まっている」と心配する状況になります。内閣府はこれを社会的な対応が要請されるケースとして挙げていますが、この場合でも、必ずしもすぐに地震が起きると確度高く予測することはできません。直近の昭和の地震では、東南海地震に続いて南海地震が起きたのは2年後のことでした。地震発生の可能性が高まっていることを示す現象が観測されたとしても、すぐに地震が起きるかもしれないし、起きないかもしれない、起きる場合でも数年後かもしれないというように、切迫度の評価は曖昧にならざるを得ないのが実情です。情報を出す側も受け取る側も、まずはきちんとこのことを認識した上で、「不確実な地震発生予測」をどのように防災に生かすか、皆で考えていく必要があるのではないでしようか。
観測網が充実して、これまで見えなかった異常が捉えられるようになり、地震発生の可能性が高まったとみられる状況についての情報を皆が受け取ることになるでしょう。その時に、政府が「今こそ心配だ」「各自対策を取れ」と宣言しても、実際に防災の効果を上げられるか疑間です。私は、それよりも、そうした状況にいつかなることを皆が自覚し、その時になって慌てないように、今の時点からそれぞれがそれぞれの立場で防災対策を進めていくことこそが防災力を実質的に高めることにつながるのではないかと考えています。