防災コラム

つたえる

つたえる

[しずおか防災人] ちょっとだけ頑張ってみる OurBuddy 01

Profile

女性防災研究会「なでしこBOSAIパワーズ」事務局

油井 里美さん

1966年、浜松市北区(旧細江町)生まれ
静岡県危機管理部危機情報課防災啓発班班長

女性防災研究会「なでしこBOSAIパワーズ」事務局 油井 里美さん

女性防災研究会「なでしこBOSAIパワーズ」事務局 油井 里美さん

女性の目線で情報発信

東日本大震災では、避難所とか仮設住宅で女性が苦労したということを多く耳にしました。女性の防災のかかわり方だとか、支援の仕方だとか、自分たちが生活者目線でできることを考えてみようと2014年11月、静岡県危機管理部を事務局に女性防災研究会を発足しました。最初40人ほどだったメンバーも、今は災害ボランティアや大学の先生など男性を含め87人まで広がり、日ごろ持ち歩ける「備えて安心リスト」をつくったり、家にある食材でできる防災食レシピを考えたりしています。
避難所では性犯罪だとか盗難、DVも増加する傾向にあるといいます。仕切りがないところもあるし、トイレが暗い場所に置かれていたりする。どうしたらいいか、防犯対策の講座も開きましたが、特に犯罪的なものは表に出なかったりするので、まだまだ情報がないようです。
食とか住環境がより苛酷になるという中で、それでも普段に近い感じで生活できたら。おばあちゃんの知恵袋じゃないけど、「暮らしの中でやっていることが防災に結びつく」みたいなことを発信できたらいいかなと。

薄れてきている危機感

実際に現場で仕事をしてみると、東海地震説が出たころと比べて、一般に危機感みたいなものは薄れてきているのかなと。2年に1回県でやっている「南海トラフ地震(東海地震)についての県民意識調査」でも、東日本大震災の直後は関心が高かったのがだんだん下がってきてますし、県地震防災センターの来館者だけとってみても2011年度の約8万人から、最近は5万人を切るぐらいになってますから。東日本大震災では県の支援隊、熊本地震で足湯などのボランティアとして現地に行かせてもらいました。被災地は当然ですが、今は南海トラフ地震で被害が大きいといわれている和歌山とか高知の人たちの意識もすごく高まっていると思うんです。
静岡でも防災に携わっている人たちはすごく頑張っていると思うんですが、県民みんなが本当に災害の時に対応できるのか。まずは防災を特別なこととしてとらえずに、長期に保存できる食材を多めに置いておくとか、今の生活の中でちょっとだけ頑張ってみる。なでしこもみんなで楽しんで、細く長く活動するのがモットーなんですよ。特に家庭を守っているのはメンバーでもある女性が多い。そうした人たちが「こんなことも防災につながるかな」って考えてやってくれることで、静岡県の防災力が少しでも上がるんじゃないかなと思うんです。(談)

油井さんらが参加した熊本地震の災害ボランティアで、被災者に足湯を施したり手をもんだりするメンバー=2016年5月、熊本県嘉島町

油井さんらが参加した熊本地震の災害ボランティアで、被災者に足湯を施したり手をもんだりするメンバー=2016年5月、熊本県嘉島町

SBSラジオで24日に放送されたIPPO(06:30~09:50)の「情報三枚おろし」のコーナーで、油井里美さんがスタジオ出演しました。

なでしこBOSAIパワーズの活動として、缶詰やレトルト食品、根菜類などを活用した防災食レシピを考えたり、災害時を想定した「備えて安心リスト」を作成したりする取り組みを紹介しました。「普段、何気なくやっている生活の知恵、工夫が災害時に役立つ。なでしこの目標としては災害の後、日常生活を送ることができるよう支援し、防災に役に立ちたい」と語りました。また静岡県の防災意識については「地域や人によって意識の差があると思う。県の意識調査でも備蓄率や防災訓練への参加率はまだまだかな」と課題を指摘しました。

TeamBuddyで今後も防災に携わる方を取り上げ、新聞やラジオで紹介していく予定です。