防災コラム
つたえる
[しずおか防災人] 静岡の防災知識を祖国・同胞に広げる OurBuddy 25
Profile
ナマステ・ネパールしずおか会長
マハラジャン ナレス さん
県立大国際関係学部卒。ふじのくに親善大使、ふじのくに防災士、ネパール工科大客員教授。
IT会社に勤務しながら、ネパールと静岡の文化交流活動に力を入れる。焼津市在住。
ネパールでは古くから地震は神様が起こす災いと恐れられています。低層住宅と農地が広がっていたころは、揺れたら田んぼに逃げればよかったのですが、都市化が進んだ現在ではこうした場所もなく、2015年4月25日の大地震では、倒壊した高層建造物の下敷きになって多くの命が失われました。
県ボランティア協会などの支援のおかげで、地震の翌年に災害時の避難所機能を併せ持つ、500人収容可能な同国初の地震防災コミュニティーセンターを開設しました。静岡のみなさんの浄財と、地域住民の資金で建設し、住民が主体的に運営しています。
毎年地震発生日に避難訓練を行うほか、備蓄した米や豆、乾燥野菜を、年に一度地域で開く祭りの際に使用し、新たに蓄える「ローリングストック」にも取り組んでいます。「防災を学ぼう」より「お祭りを楽しもう」と呼び掛ける方が人は集まるので、祭りの中で講座や地震被害のパネル展示などを実施し、意識向上を訴えています。
静岡市には現在約600人のネパール人が暮らしています。先日「ティージ」という女性のお祭りを同市内で開き、100人以上が集まりました。その席で防災について尋ねたところ、「災害は不安だが、備えは何もできていない」という人がほとんどでした。特に家にいることが多い主婦は防災情報を得る機会が少ないのが現状です。日本語習得のチャンスも少ないので、警報音とともにテレビに字幕が出ても内容が分からず不安が増すだけと話す人も少なくありません。数回に一度でも英語の字幕を出せれば役立つでしょう。
外国人は母国の文化・習慣を守りながらコミュニティー単位で暮らしていることが多いので、催事などの場で根気強く防災情報を伝える努力をしています。特に地域との関係づくりの大切さを強調しています。避難所生活では、ささいな生活習慣の違いもトラブルの原因になりますが、普段から顔見知りであれば必ず妥協点が見つかる、と訴えています。