防災コラム

つたえる

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[しずおか防災人] 感じた不安を減災意識持つきっかけに OurBuddy 27

Profile

リアス・アーク美術館(宮城県)副館長/学芸員

山内 宏泰 さん

1971年宮城県石巻市生まれ。スローフード気仙沼理事、気仙沼市東日本大震災伝承検討会議委員など。専門は美術教育、造形理論ほか。

美術館の収蔵庫で作品を整理中に地震がありました。2日前の地震の後、職員に「大地震に備えるように」と指示を出し、自らも警戒していた中でしたが、この地震の規模はけた違いで、6分間も揺れが収まらず、地殻変動でも起きたのかと思うくらいでした。

気仙沼の被害を目の当たりにして込み上げたのが「この地の美術館としてやらねばならないことがある」という強い思いでした。震災5日後から被害を記録・調査するため、職員たちと被災地を駆け回りました。

被災者はいったん避難所で生活を始めると、津波がどのように街を破壊したのかという痕跡を知る機会が限られてしまいます。捜索活動が進み重機が家屋などを掘り返したりすると、津波の経路も消えてしまいます。記録は被害状況から明日への備えを学ぶためにとても重要な作業なのです。

記録と同時に、現場に残された生活用品の収集も行いました。これらは決してがれきなどではなく、誰かの生活を支えていた物、「被災物」です。記録・調査開始から2年後には、現場の写真とこれら「被災物」を併せ、被災者の話などから構成した文章を添えて「東日本大震災の記録と津波の災害史」という常設展を当館で公開しました。現在静岡市で開催中の展示会でもその一部をご紹介しています。過去の出来事を振り返るのではなく、観る人に明日への備えを呼び掛ける展示です。

この国に住む限り、自然災害は必ず繰り返されます。大災害の記録は数多く残っており、地震に関しては、科学的に今後の発生確率が発表されているほどです。

会場で「被災物」の持ち主たちの無念さを目の当たりにしたら、皆さんは平然としていられないほどの不安を抱え、「自分は何も知らないで漠然と安心しているだけだ」と気付くでしょう。ぜひその気持ちを周りの人と共有してください。そうすることで生き残るために今すぐ行動が必要だという意識が初めて生まれ、実際の備えにつながるからです。