防災コラム
つなげる
[しずおか防災人] 現実伝え、自助・共助意識育む OurBuddy 34
Profile
YAMANEKO楽舎
代表 市川幸子さん
1961年生まれ。小学校教諭を退職し、2013年に「YAMANEKO楽舎」を立ち上げた。
正・準会員は伊豆の国市と三島市を中心に計31人。
YAMANEKO楽舎 TEL.0558-78-0183
寄り添い続ける
子どもたちに自然の豊かさを伝えることを目指して2013年に「YAMANEKO楽舎」を立ち上げた際、真っ先に取り組みたいと感じたのが、11年の福島第1原発事故による放射能の問題を、環境問題の観点から考えていくことでした。福島県庁に相談したところ大熊町を紹介されました。
イベントで同県産品を販売し、その収益を同町への寄付や、会津若松市内の廃校を利用して学校生活を送る同町の子どもたちとの交流活動に充てています。
町立小学校の運動会や卒業式に参加したり、読み聞かせやクラフト体験を行ったりしています。しかし、保護者の就労の関係で別の学校に転出する子どもが増え、町立学校の在籍数が減少しています。とても残念に思うけれど、笑顔いっぱいの子どもたちに寄り添い続けることこそが、真の支援だと思っています。
一部地域の避難解除
町は今年5月、新しい役場庁舎での業務をスタートさせ、庁舎近くの公営住宅の入居も始まるなど、再建に向けた一歩を踏み出しました。8月に訪ね、復興ぶりに驚きました。しかし、わずか数分車で走れば、帰還困難区域に入り、放射性廃棄物が入った「フレコンバッグ」があちこちに積み上げられています。町の調査に、「町に戻りたい」と答えた町民は1割ほど。厳しい現実です。
自助、共助のヒントに
大熊町で見て、感じたことを、地元の小中学校で報告しています。すでに東日本大震災や原発事故の記憶が鮮明でない世代ですが、これからの社会を担うのは彼らです。
困難な中でも前向きに生きる“大熊っ子”の様子を伝えることで、自分の身は自分で守り、地域や集団で情報を共有して連帯することの大切さを感じてほしいと思います。地震や風水害など予想もしなかった天災が各地で起きる中で、現実を知ることは何よりの備えになるからです。