防災コラム

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[しずおか防災人] 研究者と住民つなぐ役割を OurBuddy 17

Profile

県立大グローバル地域センター地震予知部門総括・特任准教授

楠城 一嘉 さん

東北大大学院修了後、スイス連邦工科大学スイス地震局主任研究員、東京大地震研究所特任助教などを経て2016年から現職。専門は地球科学、地震学、リスク共生学。

研究者と住民つなぐ役割を

1978年に大規模地震対策特別措置法(大震法)が制定されて以来、研究や観測が進み、警戒宣言発令の前提となっていた直前予知は「極めて困難」だと分かってきました。大震法がどうもうまくいかないというのは、地震学者は地震学の実力から分かっていたと思いますが、逆に言えば、地震発生前にどんな異常が起きうるか、不確実ながらどの程度の予測ならできるのかという現状は分かっているので、次のステップとしてそれをちゃんと社会のために使っていくことが大事です。

そのためには、予測して情報を出す側と受け取る側の意思疎通がきちんとできていないといけません。今回のワークショップは、情報の出し手側の研究者と受け手側の住民の間をうまく橋渡しできるような役割を果たすことに大きな意義があると思っています。

静岡県の南海トラフ巨大地震の死者は最大10万5千人と想定されています。私は岩手県北上市の出身ですが、静岡県は第二の故郷。このまま想定通りの犠牲者を出すわけにはいきません。自助、公助、共助のうち、大震法は公助に当たる部分でした。大震法の見直しが必至であり、今後は不確実な予測しか出ないのであれば、自助と共助の部分がかなり重要になってきます。「大地震が起きる可能性が普段より高まっている」という情報が出た時にどうするか-という問題は、まさに自分たちの問題であり、自分たちで説いていくことが静岡県民の防災力の見せ所だと思います。

実際、大震法や地震防災の蓄積が一番あるのが静岡県です。ぜひ皆で前向きな議論を行い、不確実な予測に基づく防災対応の議論を“静岡発”で盛り上げたいと思っています。